商品開発と基礎研究の二つのテーマで
チャレンジできる場所。
私が所属する菊正宗酒造総合研究所は、明治22年(1889)に8代目当主の嘉納治郎右衛門尚義がドイツの顕微鏡を購入したことに端を発しています。現在は伝統の日本酒造りを科学的に分析し、清酒や食品・化粧品などの商品開発、清酒と食の相性に関する研究など、菊正宗が培ってきた発酵技術を核としたさまざまな研究を行っています。
研究所では、私のような研究員が商品開発と基礎研究のそれぞれのテーマを持ち、日々研究に取り組んでいます。配属すぐの頃は所長からテーマを与えられ、それらを進めていくことになりますが、ある程度経験を積むと、研究内容や研究プロセスについても研究員に任されるように。複数のテーマを同時並行で進めるため、他部署との調整やスケジューリングといった段取りは必要になりますが、それらをしっかり管理できるのであれば、さまざまなことにチャレンジできる場所です。
最初は私も研究の段取りがうまく組めず、なかなか思うように進められない時もありましたが、先輩方はみなさんとても親切で、しっかりとサポートしてくださいました。今も普段から先輩方はディスカッションに応じてくださいますし、的確なアドバイスもいただける頼もしい存在です。
壁を乗り越えるための知識と技術が、
自分のステージを上げる。
日本酒や醸造技術の研究は、菊正宗以外にも多くの企業でされています。しかし、なぜこの香りが生まれるのか、この成分ができるのか、その過程はまだまだわからないことが多く、研究の余地がある分野です。菊正宗も生酛造りという伝統の製法でお酒を醸しており、研究所でもその研究に力を入れてきました。古くから積み重ねてきた醸造の知見はもちろん菊正宗にもありますが、そこに科学的なメスを入れ、その知見の先——美味しいお酒の開発や醸造技術の応用まで視野に入れて取り組めることは、この研究所で働く醍醐味だと感じています。感覚的にわかっていることや解明されていることを、さらに前進させることが研究所の使命。未知へのチャレンジは大きなやりがいになります。
また、自分の成長を感じられる機会があることも、この仕事の面白さです。私はもともと学生時代から微生物などの分野を研究し、社会人でもその道に進むことができましたが、それでもこれまで経験したことのない分野の壁には、研究途上で何度も阻まれました。そしてその度に、その壁を乗り越えるための新しい知識や技術を身につけてきました。その努力は決して無駄にはなりません。できることが増え、これまでと違った角度から物事を検討できるようになるなど、自分のステージを一つ上げることにもつながったように思います。
自らのアイデアを商品に。
研究成果をよりよい酒造りに。
研究の成果でもある菊正宗のお酒は、実際にお店で飲めたり、買ったりすることができます。私自身もこれまでにいくつかの商品開発にたずさわってきましたが、家族や友人から「飲んだよ」「美味しかったよ」といった声が聞けるのはうれしいですし、モチベーションにもなります。まだ自分のオリジナルのアイデアから商品化されたものがないので、まずは一つ、自分が発案した商品を手掛けることが目標の一つです。
また、基礎研究の成果は学会発表や論文投稿が主な目的になりますが、今担当している研究テーマをそこまで持っていくことも目標にしています。研究が進めば進むほど、実際の製造現場にもフィードバックできるような知見が得られるはず。研究成果をよりよい酒造りに、美味しいお酒の開発に、活かしていきたいと考えています。
応募者へのメッセージ
微生物や発酵といった分野の研究が専門でなくても、研究所ではお酒とは関係のない細胞学やバイオ研究に取り組んできた先輩や後輩がたくさん活躍しています。さまざまな分野からの意見はよりよい研究のために必要なこと。お酒の知識は入社してから身につきますので、これまでの自分の研究分野が気になるかもしれませんが、思いきって菊正宗にチャレンジして欲しいと思います。みなさんが大学で培ってきた研究の進め方といった理系共通の考え方は、研究所での仕事でも十分活かせるはずです。